誹諧埋木目録 季吟撰  誹諧之事  六義  発句之切字  本哥之発句  脇第三付面八句名残之裏  祝言夢想之会之心得  手爾於葉  本哥ことハる誹諧  皮肉骨之誹諧 真草行のはいかい  有文の句作無文の句作  二五三四五二四三  親句疎句  篇序題曲流  十躰 誹諧といふ事。奥義抄云。漢書之誹諧者。滑稽也。滑ハ妙義也。稽詞不^尽。也史記滑稽伝ノ考物云。滑稽酒器也。言ハ出^口成^章ヲ詞不ルコト2窮竭セ1若2滑稽ノ吐1^酒也  伝云 大史公曰。天道恢々タリ豈ニ不^大哉談-言微中亦可2以テ解1^紛 優-孟ハ多^弁常以テ2談咲1諷諌ス。優-旃ハ善為ス2咲言ヲ1然合ヘリ2於大道ニ1淳-干#(髟几)ハ滑稽ニメ多^弁部舎人発言シテ陳フ^辞雖^不^合2大道ニ1然モ令2^人主和悦1是等滑稽大意也 誹諧の字ハわざことゝよむ也。これによりて皆人。偏に戯言と思へり。かならずしもしからざるか。今案に。滑稽のともがらハ。ミちにあらずして。しかも成^道者也。又誹諧ハ非2王道ニ1してしかも妙義を述たる哥なり。故にこれを准2滑稽1そのおもむき弁-説利口あるものゝ如シ2言語1火をも水にいひなす也。或ハ狂言にして妙義をあらはす。此中又心にこめ詞にあらはれたるべし 又云誹ハ音非也無2俳ノ音1言可^シ用1俳字ヲ云々 雖^然古今拾遺等以用ユ2誹字1尤不審也   愚案に。こゝに。拾遺と侍るハ。後拾遺成べし 八雲御抄ニ云、或説曰。誹諧有2様々1 一俳諧。二誹諧 三俳*(言唐)。四滑稽。五諧*(言隠) イニ誹―。六謎字。七空戯 八鄙諺。九狂言イニ枉言   愚案に。或義@俳諧ハ躰も心もともに狂言也   @誹諧ハ躰狂言にして心直なる也。   @俳*(言唐)ハ。詞字からことばのうた也。   @俳*(言隠)ハ心あらハにきこゑず外物にすがりて狂じたる也。滑稽ハまハりかしこしとよめり。其心如^奥義抄1@謎字ハなぞ/\のやうにいへる也   @空戯ハひたすらにたはれて実すくなき也。   @鄙諺ハいやしきことばをきらハで云立たる也。狂言ハ偏におかしきやうにいへる   也。枉言といへる疏によらば火をも水とまげていひなせる也とぞ @飛鳥井殿の。古今集の説にハ。誹諧と云こと世間にハあれたるやうなる詞などをいふと思へり此集の心ハ更にしからず。たゞ思ひよらぬ風情をよめるをはいかいと云也と申されし。されど哥のあらき事をもまじへたる也とのたまへり 宗祗云誹ハ甫尾ノ切。諧胡皆切。和也合也 此はいかいの事他流の儀は物をいかにもよくいふ人のあらぬ事をいふが。しかもよくいひなせるよしとぞ当流に不^用^之1。当流の心ハ非^道教^道非^正道進ム^正道ヲと云これにかなへり。史記に滑稽伝と云それに似たり   愚按に此祗註の心ハさきにしるせし奥義抄とひとしきにや。八雲御抄飛鳥井殿の御説の心。をの/\いさゝかたがひめありといへど。いづれも捨まじき正説なればともにならべて心得べし 又長頭丸の口伝侍り。今しづかにしるすべくなん @六義の事しきしまのやまとことの葉にハ。古今集にぞ侍るを。京極黄門の御説に。#(ノ几)六義の根本ハ毛詩よりことおこれり。よろしく是を披見して。其たゝずまひを見よとかやの玉ひけり。連哥にハ心敬僧都。大かたむくさの心句ごとにわたるべき也などきこえ玉へりき宗*(羊良)などもしるし給へるに。俳諧の句。ことなるべきにあらねば。今此説々にしたがひつゝ先師のしめし給へる句どもをつらね次に愚句を□て心あてにそれかとばかりかきけがし侍る 一 風 八雲御抄に風と云ハそヘうた也。物を物にそへよめる也。其事をいハでその心をさとらすといへりと云々  京極黄門の御説にハ風といふものハ。其色見えず物によせあはせて。其品あらハるゝためしなり風の哥かくあるべきにや。いかなる事にてもあれ其事のよしをいはむとてあらぬ物をひきよせてよむを風の哥と申也。扨清輔の説にいハく毛詩ニ云 上以^風化下。以^風刺^上註云風-化風-刺皆謂譬喩。不2仟ノ言也今案に同書云風ハ諷也。そふとよむ也。そふと云ハ題をあらハにいはずして。義をさとらする也。故に風をそヘうたと云。宗祗古今の抄ニ云毛詩の六義にハ。種々義ありて。或経緯といひ。或ハ躰用と分つとしるせり。風にして興を具するもあり。其様すこし本朝に異也又義通ずる説もありといへり。連哥ニハ心敬僧都そへ哥の心とて @名ハ高く声ハうへなし郭公。と云句を引て二条太閤様を時鳥そへ。称揚し奉る成べし。物にそへて。句の心をあらハすを風の句なるべしとのたまへり半松斎宗*(羊良)も心におもひ目に見そヘいふ義也。などしるし給へりし是になぞらへ侍らば。誹諧の句もなにかことならん     よめならば見どりにせばや柳髪 長頭丸   愚句の中にてハ山崎ニ而宗鑑の旧跡を見侍し時     すきものハさくをあやかれ梅の花   と申侍りしこれらやかなひ侍るべき 二 賦 八雲の御抄に賦ハかぞへ哥也。京極黄門御説に賦ハ哥人の本意也。秀人の大旨也。心を一遍にとどめずして。偏執なきを秀人と云べし。清輔云 正義云賦之言鋪也。直ニ鋪キ2陳メ。今ノ之政教ノ善悪ヲ1 今案賦ハ鋪也しくとハことをつくす也。題の心をつくして。たゞちにいふ也。又ものをかぞふるはつくす義也。故に賦をかぞへうたといふなり宗祗云あり事をたゞちにかぞへいふ也。たとふるにあらず賦ハ量也構也又ハ鋪也置ならべたるやうにいふ也量はかぞへいふ心同之。構も量の心と同じにやなど侍り。心敬僧都の連哥の句にハ物ごとに心をくばりてかよハしたる句なるべしとかやのたまひぬ宗*(羊良)こゝろを一ぺんにとゞめざる義也といへるハ彼黄門の御詞にかなひ侍るにや。此宗*(羊良)の引句には すゝきちり花に霜ふる岩ね哉。花にそめし心もちらぬもミぢ哉などいへる句をつらねかき給へりし。これらの心をなぞらへて誹諧に申侍らば     草でなし萩荻すゝき菊きゝやう 長頭丸     山の景や一児ざくらにほのうミ 季吟 三 比 八雲御抄に云比ハなずらへ哥也物になずらへたる也。定家卿又ハたくらべ哥ともよむべきにや。とのたまへり清輔云正義云見今之失不ノ2敢仟ノ言1取テ2比-類ヲ1以テ言^之 今案ニ比ハなずらふる也物に似する也。故に比をなずらへ哥と云蓮心院殿の古今の聞書に比ハ物をとりて。物ににたるを云也。世俗に両方をかねたると云同心也。霜のをきて雪のふりてなどをきふしにたとへ身のふりたるによせてよむをなずらへ哥と云也。心敬僧都の引句ニハ下もみミぢちりにまじハる宮ゐ哉と云をかきて。散の字を。塵につくりなして。なぞらへたるなるべし。ときこえ給へり。宗*(羊良)の抄物には物になぞらへる儀也とて。遠山ハ袖のしたなるかすミ哉など云句を書つらね給ひしかハ。彼定家卿の御説に詞と義と二つの義をふくめたるを言義比といひ。月をはたらかさずして氷といひ。花ををして雲といひたくらぶるを義。体比とのたまひをきし心ばへにかよひ侍るにや。俳諧にハ     つかぬかねひゞくほどふるしもく哉 長頭丸     うぐひすの和哥三神や月日星    季吟 四 興 八雲云興ハたとへ哥也。又云古今にそへ哥に同じやうなれどすこしさまをかへたりといへり蓮心院殿の聞書にたとへ哥ハそへ哥にすこしかハる也たとヘバそへ哥ハかくしたとへ哥ハあらハるゝ也。なにハ津の哥ハおほさゝぎの帝をそヘ□とあるにてこそきこえたれ。さなくハたゞ梅の哥なるべし。たとへ哥ハ恋にも述懐にもその事をいひあらハしてさすがに物にたとへてよめる也。定家卿御説興に二つあり譬興節興也譬興といふハ今のわが恋ハとよめる哥是也     わが恋ハよむともつきじありそうみの浜のまさごハよミつくすとも   @又云。節興と申すハ四時の折節にしたがひて。興ある事をおもしろくいひたるを節興と申べし     @清輔云正義云見テ2今之美ヲ1嫌フ2於媚*(言#(申又))ヲ1取2善-古-事ヲ1以喩勧^之 今案に。興をば毛詩にたとへとよめりたとへと云ハかれをもて是になぞらふる也。故に興をたとへうたといふ   @宗祗云風比興の三つハ。皆物に詫する也。@風ハふかくかくれ。@興ハすこしかくるゝ也。   又云@比ハあらハに興ハかくれたる也。所の興をおもてにいひ出して。懐ハかくるゝ也。ほむべき事などをあらハにいハずしてたとへをとりていふ也。嫌2於媚諛也云々人を直にほむる事へつらへるに似たるをはゞかる心也。漢の先儒ハ。ミな興の字を側声とす。たとふる心也宋儒ハ平声とす起と用る也。所詮心をおこすと云もたとふる心あるよりの事なれば畢竟同意也   @心敬僧都連哥の引句にハ 五月雨はミねの松風谷の水。と云句をかきて。是は其物にゆへづきたるを。見なしきゝなしたとへたる興の句成べしといへり。宗*(羊良)の説にハ。春風をあハをによれる柳哉 冬川の雪の柳や滝の糸。などやうの句を引て。物にたとへて興あるてい也。といへりけりされば誹諧にも     かりがねハ秋風楽のことぢかな  長頭丸     をミなへしたとへばあハの内侍哉 季吟   これらや此たぐひならむ 五 雅 八雲に云雅ハたゞこと哥と云り。古今是ハことのとゝのほりたゞしきを云也。定家卿云雅ハ思ふ事をすこしもかたよる事なくたゞ一筋に。始よりをハり迄いひ下すなり雅に二つあり@一にハ言雅@二にハ意雅なり言雅と云ハこと葉にあらハして。そバよる事なくよむ也   @意雅と云ハ心はなを/\をとことなる事なく詞にすこしうたがハせて。治定なきさまなどもよミなしたらんを云べし。     春立と云ばかりにやみよしのゝ山もかすミてけさハミゆらん   此哥ハ心ハなを/\として詞ハすこしうたがひたり則ばかりに@やのやの字と終りの@らんの字ハうたがひたり。これなんかなふべき哥也。     清輔云毛詩云。言2天下之事1形2四方之風1謂2之雅1雅ハ正也。政有2小大1政有2小雅1焉有2大雅1焉   @今案2雅ハまさしき也たゞしき也。物にもそヘずたとへをもとらぬ也。正に雅をた   ゞこと哥と云   @宗祗云雅ハ賦に似たりしやうなれ共。賦は政の善悪をかぞへいふ也。雅ハ政をたゞしくありめにいふ也   @心敬僧都雅の引句に。     夏草も花の秋にハ成にけり   と云をしるしてたゞちにいひたる句也。ことば心をたゞしくいへる雅の句也とのたまヘり。   宗*(羊良)ハおもふ事をたゞことにいふ義也とて。     @いつをミん山ハうす雪うす霞@あけやすき比とや出て夕月夜   など云句を引たまへり はいかい     鳳凰もいでよのどけき鳥の年 長頭丸     まざ/\といますがごとし玉祭 季吟 六 頌 八雲云頌ハいはひ哥也。是ハ世をほめて神につぐる也。定家卿云頌ハ神明につぐる心ある也。頌に又讃頌哥といふもありいハひ哥と申す。ほむる心あれ共。まさしく言葉をさしあらハしてめでたかりけりなどいふをば讃頌の哥と申也。只何も神明に告る心あらば頌の哥と申べき歟。   故毛詩序に云     美2盛徳之形容1以テ2其成功ヲ1而告2神明1   といへり是ハ六体の中の頌の所の文なり清輔云正義云頌之言ハ誦也。容也。今之徳広メテ以テ美^ム之。   @今案に頌ハ誦也。称讃之義也。祝ひハほむる心也。故に頌をいはひうたと云宗祗云頌ハ容也誦也。容ハ王者の盛徳をかたどり出してほむる也。誦ハうたひあぐる也ひろめてほむる心也頌の詩ハ宗廟にて誦して神にまうす也世をほめて神につぐる也といへる比心也と云ゝ   @心敬僧都の説に     @花椿みがける玉のミぎり哉   と云句をひきてほめいはひたる心なるべし。頌の句也。古今の仮名序の小註にハ。頌の哥にハ。神祗の心有べしといへり。比小註ハ後にある人の書入たる詞也といへり。されば談義ともに心得ずとて。難ず。作者口伝あり。然ル間本註をひきて此本句どもをしるし侍りとかやのたまへりされ共宗*(羊良)ハいはふ心を神に。つぐる義也とて。     神のもるこずゑや代ゝの家ざくら。   と云句をひき玉へりこれ京極黄門の御心宗祗法師の説などにも叶べきにや侍らんとて誹諧にも宗*(羊良)の頌の句の心にしたがひ侍し     信あればこれもとび梅のきどく哉   長頭丸     冥加あれな宿にあやめをふき自在   季吟   長頭丸六義の口伝に云     @風ハ題をあらハさずして物をとりてひとへにそれになして云也   @比ハものをとりてそれによれることばによせいふ也。興ハ物をとりてそれにくらべて題の心をあらハす也。   是@風@比@興のひとしきに似てのいさゝかのたがひめ也。   又@賦@雅のかハりめハ@賦ハ物をしきならべてあらハにいふ也   @雅ハすこしもあやつることばなきにや。   @頌ハいはひて神に申す也。   @宗祗法師云六義の中に雅を執する事あり。正しき道を本とすることハり也。周詩思無邪を用る心也。畢竟此義を肝心とす。当流の心也。宗*(羊良)云飛花落葉を見てハ。真如実相を観じ。春秋のうつるにハ。有為転変の理をかなしミ。哥を詠じ。発句を得。風賦比興雅頌の六義をたどりて六道輪廻のもとひをわきまふぞかし     @愚案に。誹諧連歌実に狂言綺語たりといへど。戯言なれども思ふより出るわざなりければ。この心をえざらん人のミだりに口にまかせたらんハ。似たる事ハにたるもあらめど是なる事ハいかでか是なるべき。よく/\思ふべぎことハり成べし   @発句の切字 かな  ちる花を追かけてゆくあらし@かな     うらゝ迄おめでたい@かな年のくれ も哉  二季にさくひがんざくらのたね@もがな     かたぶくにほうづえ@もがな月のかほ けり  もり山のいちごさかしく成に@けり     花桶もミつわぐミ@けり姥ざくら けりな 春過て夏来に@けりなすゞめの子 む   女にてミ@んやなぎがミやなぎごし     花ミせ@んいざやあミだのひかり堂     北面のミさぶらひけ@むまどのむめ し   夜目遠めかさのうちよ@し月のかほ     あの世なるもをよバ@じこゝのしなの蓮 もなし 天神ぞ梅にましたる花@もなし     何@もなしわが頭陀ぶくろ夏バらへ ぞ   本尊@ぞ心にかけたほとゝぎす     一番にみゝより年@ぞとりの声 さぞな 庭にさへ@さぞな落葉はひがし山 かしな ふれ@かしなむぎはあしくと花の雨 か   哥よミ@か雪ひらめける春のそら や   春たつといふバかりに@やかざりなは     あをまめ@やとうふのうばが若ざかり     滝つぼハ冬がんなれ@やゆふすゞみ     おもしろ@や花にかいだうくだり月     きゝたし@やけふの雨山ほとゝぎす やハ  くすの木がなるとのミ@やハ岩つゝじ かハ  もゝの酒いづミ@かハけふみかのはら こそ  いもがこハはふほどに@こそ成にけれ     たんぽゝの花@こそ露のをきつゞみ なり  かミがきもじゆくし色@也八王子 いさ  くるゝをも@いさしらぬひのつく/\し いかに なくにさへわらハゞ@いかにほとゝぎす いづれ うた@いづれ小町おどりやいせをどり いづこ わか水ハ老を@いづこへはねつるべ いつ  われもかくて@いつこんるりの玉祭 なに  ほねおりてまけかちハ@なに扇きり など  雨ハ@などとがなき花をうつけ物 いく  千年も@いく七まハり春の藤 誰   花ざかりそれ@たがとへばよしの山 つ   とをといひてよつ@つことしの老の浪 ぬ   もはや年のおぼそに成@ぬ小晦日 よ   さかりにハ忠が不忠@よ花のあめ   是たゞ大概をあげ侍りなをうたがひの詞決定のことばなどの切宇ことごとくしるしがたし       @下知 れ   佗てお@れ七重のひざをやへざくら よ   くれてみ@ようすずミ色の綸旨梅 な   すりこぎにしらす@なたでの花盛 へ   守り給@へことしハやくし十二神 そ   ねなほり@そかるゝハうぐろもちつゝじ け   いやめなる子どもうミを@けほとゝぎす や   ちぎらずといハヘ@やミかのよもぎ餅 せ   四十からもんどりかへ@せ老のはる め   よ@めこよひ十三経も窓の月   猶あげていふべからず。又いひそへてきれ字に用ひたる事あり     さか@さいのかハらなでしこなむ地蔵     ひたとおハゞ@いねのなかなるしかの声   をまハしの切字     うぐちさへえくぼにミる@を花の顔   @玄妙切@し@ぞ@やの分別と云事あり     うたもな@し花@やめいぼくなかるら@ん   猶この句のならひ。三世の心をこむるふかきロ伝はべり。初心のかゝるわざして人のミるめいとかたはらいたくくやしく侍れバかならず心あるべきにや   @大廻切 つねハすまじき事也   @たまりやせぬたまりやいたさぬ@花の露   たまりハせぬ花の露とまハる也。   @三段切     雪ハけさ@庭の木に餅@岩に花   @三字切     かいで見@よ@何のかもなし梅の花   @二字切     山さと@や@いつも正月かどの松   @三しの事     @ふかし@とをし@おほしなどは現在のし也@あるべし     @なかるべし@あらじ@なからじなどは未来のし也   此二つのしにてハ切字になる也@ありし@思ひし@なかりしなどハ   過去のしとて切字にならざる也。さきにひく所の@夜め遠めの句ハ現在のし。あのよなるも及ばじといへるハ未来のしにて侍る也   @をハんぬ@ふのぬの事     はつかになりぬあいも見もせで   これ定りて廿日になりをハんぬと云心なればをハんぬと云也さきにぬの字の切字にひき侍しおぼそに成ぬもおなじ事也   @ふのぬと云ハ@あらぬ@せぬなど云やうのてにをは也たとへば不有かきてあらぬとよミ。無為と書てせぬとよむなれば不の字にかよふぬの字をふのぬといひ侍り   @又おなじ詞ながらいさゝか声のかハりてをハんぬにもふのぬにもなれり@消ぬ@思ハれぬなど@ヘ@け@せ@て@ね@え@め@れ此文字より。つゞきたるぬの字ミな /\まぎるゝ也よく/\その句のこゝろをあぢはふへし     雪まだとけ@ぬ深山のおく   是ふのぬ也。     雪はやとけ@ぬあの朝日山   是をハんぬ也。  本哥の発句     @名にしおハゞまめ鳥や月の都鳥   名にしおハゞいざことゝハんミやこどりわがおもふ人ハありやなしやと     @としをへてすハるや花のかゞみ餅   としをへて花のかゞみとなる水ハちりかゝるをやくもるといふらん   右二句。本哥のこと葉をあらぬ物にとりなして。上下にをく類なるべし     @さミだれや山どりの尾のしだらてん   あしひきの山どりのおのしだりおのなが/\しよをひとりかもねん     @花ハちれどねこそ世継のおきな草   うへしうへハ秋なきときやさかざらん花こそちらめねさへかれめや   右二句本哥にかいそひていへり     @老となるはじめや月を見あげじは   大かたハ月をもめでじこれぞこのつもれば人の老となるもの     @是やつミて法花経を得し鶯菜   ほけきやうをわが得し事ハたき木こりなつミ水くミつかへてぞ得し   此二句本歌贈答せしなり     @卯の花ハしらがぞ夏の月がしら   うの花のミなしらがともミゆる哉しづがかきねもとしよりにけり     @をミなへしそちやむぐらの家とうじ   やへむぐらしげれるやどのさびしきに人こそ見えね秋ハきにけり   右の句本哥の心になりかへりてしかも本哥をへつらハずしてかハれる心を云侍し也     @こげるからや伽羅の焼がら梅の花   いにしへの匂ひハいづらさくら花こげるからともなりにけるかな     @なにはがたミじかきかものあしべかな   難波がたミじかきあしのふしのまもあハでこのよをすごしてよとや   右本哥の心をとりて風情をかへたり     @哥もがなよいさくさめのとしのくれ   今こんといひしばかりをいのちにてまつにけぬべしさくさめのとし   @朝がほやるりをのべたる花の顔   るり色にさけるあさがほ露をきてはかなきほどぞ思ひしらるゝ   此二句本哥のことばをとれる斗也   右此本哥をとれるしな/\"ハ井蛙抄愚問賢註などの心を。かたのやうになぞらへてしるし侍る。まことにあたらぬ事どもなめれど。初学の人のためにあらざらんよりハとてなん書。つらね侍し。をよそ古詩本語たとひ世俗のことわざをもて句作侍らんも皆々此本哥。とる心ばへにてをしハかるべし  詩の心の発句     雪つくす江南のはるのひかり哉   行尽江南数十程     ふきあぐる花や春風たうりてん   春風桃李花開日     月のかげをそきハ雨やふらうもん   不老門前日月遅  本説の発句     あハいゐを手づからもるやをミなへし   伊勢物語に手づからいゐかいとりてけこのうつはものにもりける事也     とこやミやあかりしやうじのかミ神楽   天照太神天磐戸にかくれまし/\ける時。六合とこやミと成けるに天鈿女命歌舞をなしていは戸のまへにてかなでければ日の神めで玉ひて。ふたゝび世にあらハれ玉へる事日本紀古語拾遺などにあり  世俗のことわざにてせし句     文月やめでたくかしくはすの飯     よるたゝくをとやね耳に水いりな     子をつるゝきじはあいやのほろゝ哉   @かなととめたる発句ハにてとまりに多くハいはるゝ物にて侍れば其第三ににてとはとめ侍らずとかや     わらべ敷長歌反哥も試筆哉   と云句先年仕り侍し。これらの第三。にてとハとむまじき事にて侍るを其第三     重代ハやきばかすまぬつるぎにて   とありしを。正章も心つかざりしにや何とも申されざりけるにやつがれ申て。やいばかすまぬ太刀ならんとなをし侍し也     右俳諧連歌の発句切字ハ先師長頭九に侍し半松斎の抄物をうつしてあらまししるし侍る所也初学よろしく見ならひきこゆべきものなるべし  @脇第三面八句之事 半松斎云脇ハ発句にしたがひて。時節をかゝへ、又客主のあひらひ侍るべし。第三ハ転るをもとゝして。一句によそひあるべしとぞ @紹巴法眼の云脇ハ発句にかいそひて句がらをたけ高く物の名か。なにゝても一字にてとめ候なりてにをはにていひながしとめぬ物也。又云本哥の発句の脇ハ発句のいひのこしたる詞をもて哥の末をつゞきたるやうになすべし一ふしの手だてをなしたきよしを思ひてせんハ脇の句の本意にハたがひつる也。脇におゐてハ。五つのやうあり。@一に ハあひたい付@二にハうちそへ付@三にハちがひ付@四にハ心付@五にはころどまり也 @長頭丸云わきに対付ひろひづけ大小のわきなどいふ事あり   @愚案にひろひ付とハ発句の心をうけてよくこまやかに付おほせたるをいへり@彼心付といへる打そへ付などの玉へるにひとしかるべし。対付ハあいたい付とひとしく。大小のわきとハちがひ付の事なるべき也 紹巴法眼ひとからミと云事脇の句にありたとへは藤などの発句に松を根ざしてはひかゝる物なれば。一句の中に松などに取合候はたゞ花を賞翫にて候を。発句に無益の植物を取そへ候事さらにいらぬ事也是も上手の行ひハはかりがたく候 又云第三ハ脇の句によくつき候よりもたけ高きを本とせり句がらいやしきハ第三の本意たるべからず 又云第三ハ相伴の人のごとしたけたかく優なるを希事にて候。左様の義ハ初心の人は学びがたし。風体をかざり第三めきたる句作り可然候。惣別面八句十句迄ハ各心得候間ゆるしなき物也。 四句めをば脇の句より引さげてやす/\と付候を。四句めぶりと申候とまりハなり。けりなどゝいひながし可然候。五句めハ第三の句をかたどりたけをたかく御沙汰可有候。韵はらんなどはねて可然候。左なくハいひながしたるべく候@七句めハ五句めより句がらをやす/\と風景風情ばかりにて可被成候。八句めハ詞につまり候故に何となくかろ/\"と幽玄躰をもて付候を八句めぶりと申候。九句めハことにつまりゆく物に て候間前句のてにをはにそとあたり可被付候去ながら懐紙うつりの事二候間句たけ引たてられ侯やうに尤ニ候   @愚案に右連哥のならひにて祖父宗竜此法眼にうけつたへ侍し抄物にしるされたるおもむきなれば。かきつらねて侍る也。故長頭丸誹諧にハかゝるおきても物し給はず。さしあひをはじめよろづゆるべ侍るわざなれば大かたハ此心しらひをもとゝしてさのミ又おりめだかにのミハあらず共とぞのたまひける。しかあれど未練の滑稽連師にまじハりてたゞにはいかいハ何の作法もあらぬものにやいかなるべきしらずかしなどあさはかにいひゐたらんハいと口おしかるべきわざなればよく定めをきてを。わきまへたらん何のさまたげ有べきぞやたゞ大かたにかく心得ゐたらんハかのわらひをまぬがるゝにひとつのたすけにこそ侍らめ 紹巴法眼云夢想神祗尺教懐旧などには十三句めに心得あり   愚案にこれ口伝事なればかろ/\"しく書あらハしがたし 又云十一句めより心をめぐらし思案専要也風姿をつゞけ詞をかざり風体をたしなミあそばし候へよき前句に付候ハんとて面をすり句ごとにをくれ前句うけられぬ所にて付候へば必一句もふしだちつかぬものにて候。先々懐紙うつりにハ二句三句のうちを心がけやす/\と付られ其うちに思ひより申候句出来候ハゞそれにて一ふし仕候へば連哥もは なやかなる物にて候。心いたられず候而存分よりほかの句を初心にてねがひ候間。句毎にをくれもてゆきやり句を細々なす事也是等の心得肝要たるべき也 @又云祝言の時発句脇第三の句などに仕様の事。@桜@花@梅@柳@松@竹@花を待@花ひらく@めぐむ花@花おそし@木のめだつ@若葉しげる@木玉の砌@玉しく庭@玉すだれ@まきの屋@甍かさなる@軒のつまづま@門道のゆきゝたえやらぬ@里/\の行かひ@駒はなちをく 如^此可然候。 又云祝義の時松ハ千代千年などゝ限りを定めざるよし乍去かたづくべからず@花をうへそむる@小松うへそふるなど可然末をかゝへ候事よし@夕露@夕霧@雪消@露落@花散@木葉落る かやうの事ども祝言にハ如何ニ候@朝霞@明方の雲@けさ@朝かやうの事にて可然候 又云祝義の時上句ににほひの意得あり発句脇第三同前 宗祗云祝言の発句にかなととめ候ハんに脇のはじめのことばしきしまの道などやうの事すまじき也かなしきとよミつゞけらるゝ故也@又わきのとまりにうれしきなどゝめ候ハんとかなしきと文字ならびてあしく候すべて玉柳などいふ詞心すべき也。玉や。なきと云にもよまれ候へば也。是にてよろづ心うべき也   愚案に右のいましめども初心より後心にいたるまで能々忘るまじきことハり成べし @紹巴云名残のうらなどにことがましき詞など努々せぬ物也。付句も前句にひかれふしだつ物にて候へば付句にてやす/\とやる事功者の心得成べし   @愚案にはいかいハとにもかくにもよく付たるをもてはやし侍れば名残のうらにてもたゞおほづきならざらんやうにたしなむべしさすがにはいかいハ連哥よりもことひろき道にて侍るめればつけ侍らんてだてもすくなからぬにや。長頭丸もさのミこそのたまひしか。さりとて前句にせんなき事など一句をかざらんためにことおほくたらんハあやなきわざにこそ侍るべき又無文にてあまりにぬるきやうならんもきゝ所なき物なれば其程のさしはからひたゞ其人の心えなるべし  @手爾於葉之口伝    @七ノやの事 口あひのや 君@やこんひとりハねじの年こしに 切や   鳥のこ@や十づゝ十ひらかさぬらん 捨や   あの人とはだふれんとは思ひき@や 疑のや  なつけば@や雉も野心うせぬらむ 中のや  御づしにはひな@やはりこのならびゐて   是をはさミやともいふ也 はのや  ふじ山@やこしにハ雲の帯をして   これをのやとも云侍り すミや  のぞく@やと壁のあなたを気遣ひて    此外 こしのや 不孝なる心@や人であらざらむ   右はじめより三つめ口あひのや也@五つめ切や也 韵やハ捨や也   @五つめ疑や也@四つめすミのや也@九つめこしのや也  △ @にてどまりのをさへ字五つあり を   水くさき心@を人のならひにて ハ   うたてき@ハをひ女房のりんきにて は   よりそへ@ば顔ににせざるこゝろにて も   老たれどしにともなき@も道理にて からぬ しなだるゝかほにく@からぬまゝ子にて  △ @ぞかよの三字にてハてととまらぬを。てととむるをさへ字の事 ぞ   夜ばひぞ@としゞしにゆくもうたがひて か   とゞろなる神か@ときけばうすひきて よ   さらばよ@とたんだ一こゑいひすてゝ  △ @いつのての事 口伝あり     なが旅ハいつまで草の秋をへて     ねづなきハいづれかうしにならびゐて     やる文ハいづこのたれをあてどにて  △ @下句のてどまりの事     見ぐるし野べの萩ハしほれて     松にけあげしまりハとまりて  @下の句のつゝどまりハさのミならひと云事も。あらずたゞ上の句のつゝどまりにハ中に@なりとか@けりとかいふ詞ありてつゝととむべきよし宗*(羊良)の説なれどもすべて近代好まざる事とかや下の句ハ     大さかづきをくミかハしつゝ   などちかくも長頭丸などいひたまへり猶口伝あり  △ 見ゆどまりの事 う   ほの/\"月のひかり@堂みゆ く   すいりせし鵜の波にう@くミゆ す   ミしやげし柿ぞかちおと@すミゆ つ   うこんのばゝに玉をう@つ見ゆ ぬ   かく文章のつくろは@ぬミゆ ふ   うちはたかりて縄をな@ふミゆ む   木ずゑにとゝがゑのミは@むミゆ ゆ る   むかひの山にところほ@る見ゆ    大かたかやうにてミゆととめ侍り又さならでとめたる例もあり。    ミづからハかく覚えて人の事ハとがめ聞ゆまじき也  △@こそといひてハ けせてへめれととまる也 け   馬のうへにて琵琶をこそひ@け せ   きもをこそつぶ@せね耳に水いりて て   すミがしらこそけぶりとはた@て ね   いひこそハせ@ねはらのたつ事 へ   おためこそ思@へにくさのいけんかハ め   木の葉こそふるら@めかゝる晴天に れ   肩をこそうらむ@れ世をバかこためや   此外しかありしなどゝもとむる也彼人しれずこそ思ひそめし@かの類也  △@こそてには     ぬしあればこそつらき若衆     はじめこそこらへしざれのこく成て  △@これら@れと心にもちてとめたる也   いかでいつなどなにさぞ誰いくやかなぜにどち如此押字にて留也  △かさねらん     @とめざらん物ゆへまりをけあぐらん     @秘所ぞうきしるらん事をかくすらん  △@一字ばね@二字はなし@三字くはへ@四字不同と云事あり 一字ばねとは  押字なくてはぬる也 たとへバな@んせ@んみ@んなど也 二字はなしとハ 前句の@やをうけてはぬる事をいふ 三字くハへとハ 宗*(羊良)三ヶ月に原と付老にその森とつくる類也との給へりはいかいに云         @手折て供にもたせぬる萩         大水も心かくらし玉まつり 四字不同    宗*(羊良)云松と藤と有前句に風と波と付る也云々         @愚案ニ松に風ハくるしかるまじけれど藤に浪ハ今の世のはいかいならばうしろ付とやいはんそれも又句の仕立やうによるべきにや  △@治定のかと云事     花のミ@か若衆ざかりもしばしにて   此かにてハてととまる也又     あらそふ@かもちをねずミのひいていて   かやうにてもとまるべし   彼宗*(羊良)の抄物に句切連哥と侍るハ一句のうちを句をきりてきく所あるを云とぞ長頭丸をしへ玉へりける連歌の句略之       世にそまらざる気だてとぞしる     まあをなハたゞ松ばかり。紅葉して  @異形通対と侍るハ無名の鳥に有名の鳥を付とりなしたる句也とのたまへり連哥省之       夜がながいとやむしもわぶらん     あぶら竹すべりて蟻ののぼりかね  @かけてにはとハ前句の終の詞を当句のじめにうけてつくる也とかや連哥に       くる秋の心よりをく袖の露     かゝるゆふべをおぎのうはかぜ   是をはいかいになぞらへ侍らば       見玉ふと袖に流れおんなミだ     おつる出家のこゝろわりなし  @きせてにはとは当句の韵の字を前句のかしらの詞にことハらせたる也とぞ連哥       せんかたもなき秋のかなしき     霧くらき夕のやまの雨やどり   はいかい       めぐるもやすき神の宝前     ミあかしもあぶらさしたる御くるま  @かさねてにはとハ前句の終のことばを当句のかしらにうけてかハれる事のとなへおなじきことばにていひ出せる也とかや連哥略之       桐のはにきれいにそゝく露の玉     たまの客にや出すひやむぎ  @あたりてにはとハ前句にけやけき詞あるにあたりて付る句也となん連歌引にをよばす誹諧       又かきたつるまどのともし火     古今集すめば後撰に筆をそめ   @又といふ詞に@重又@地又と云事有  重又 また留守をして茶磨ひけとや  地又 又とあふそもじならねばなごりおし   かやうのてにをはをよく心得て付侍るべきなりとかやすべて八字の付所といふ事あり    @さへ@なに@か@猶@こそ@ハ@誰@も   是也これらの心をしらで付侍る作者ハめなしどちのをしに道問ける類なるべし  △@すミのてには     のびあがりのぞく垣ごし花ありて     すんずりとしたる松陰駒とめて   かく。のこしをくてにをはに一句のたけたかくなる物なれば第三などせんに此心ばへありて。よきぞと返す/\ぞの玉ひけるを。今に小耳にはさミて忘れがたくげに/\と思ひ出る折々おほく侍るぞかし。のちのこれをミん人かならず/\ゆるがせにおもひなすべからず  @本哥ことハる俳諧       まかりかへるや大覚寺殿     滝の音はたえて見にこしせんもなし       恋のけぶりとよんだるハなに     待宵でなきにも侍従かほらしつ  @皮肉骨の誹諧 皮     荷に念いるゝおほはかのしゆく     本膳はいとそさうなるはたごにて 肉     普賢の前によめるほけ経     うぐひすのこゑハさくらのこちらにて 骨     からり/\とからめきぞする     さんせうとこせうをいれてすりこ鉢   真草行之誹諧 真     文字数多くかこつたまづさ     からすうりのさねこんといひし比も過て 草     どしめくや馬物具のをとならし     たいこをうちていさむさいれい 行     はれさうになき月のくろ雲     心をば腎よりいろにまよハせて   @宗*(羊良)云心詞かけあひたるを@真といひ趣斗を付るを。@草といひ大かたよりあひたるを@行といふとかや  △有文の句作無文の句作りといふ事有     ながめて月を猿やほしがる   是有文也かやうに句作をたしなむべし     月をながめて猿やほしがる   是無文也一句こともなきにや  @下の句に@二五@三四@五二@四三といふ事しらずハあるべからぬならい也 @二五@三四とは     かい日のくれに@なく@ほとゝぎす     山ほとゝぎす@きなく@晩景 @五二四三とハ     うそくらがりに@ほとゝぎす@なく     晩がたのほと@とぎすと@なけり   おなじ作意をとざまかうざまに思ひめぐらして其うちにとなへむに耳にもたゝずきゝよろしきやうにしたて侍るべしすべて三四をよきにさだめ四三をあしきにさだめたり二五と五二とハ其句によるべきにやとぞ  @哥連哥に親句疎句と云事あり親句とは詞のたくミをもとゝし前句の付合にしたしミたる也心敬僧都の連哥の引句に       氷の上に波ぞたちぬる     さゆる夜の月のかげのゝ花すゝき       あるじやかたを今つくる也     片岡の里のあたりを田になして   など侍りはいかいにも       地をくゞりてぞ天へあがれる     うぐろもちを黒やきにする夕けぶり       橋のいたをも引かとぞミる     大鼠ながらの里にあつまりて   心敬僧都疎句の引句に        はじめもはてもしらぬ世中     わたのはらよせてハかへる興津なミ       これやふせ屋におふるはゝき木     いなづまの光のうちの松の色   前句の姿ことばをからで只ひとへに心まで付たる也とのたまへり   誹諧       腹だちやひろき所をせばくして     いらぬすミごをうちてまけぬる   @哥には疎句に秀哥おほしと定家卿も申玉へるとなん。俳諧ハ先耳ぢかきをもとゝして侍るわざなれば。にや。疎句の躰ハめをどろかぬ心地なんするとかや △@歌に篇序題曲流と云事あるを連哥にもあるべしとて心敬僧都云 仮令下の句に曲の心あらば上ノ句を篇序題になしていひ残すべし又上の句に曲の心ありてもミたらば下句を篇序題にいひかなへず候となん@はいかい      あふミぢさして落てこそゆけ    物ぐるひこしにハあふぎ目ハなミだ      さぐれどもけハさハらざるとこ    えんわうのふすまハ鳥の名のミして  此句前の下の句に曲の心ありていひつめたるゆへに付句を篇序題になしていひかけて前句にゆづりたる也      わが心なたねばかりに成にけり    人くひ犬をけしといはれて      うへハ下したハうへにや成ぬらん    ひざにハかしら手にハひぢしり  此二句ハ前句に曲の心ありていひあらはす故に下の句を篇序題になして前の句をうけていひながしたる斗也心敬僧都連哥ハかならず上の句をいひのこして下の句にゆづり。下の句をいひはてずして上句にいはせはつべき物と見えたり各々にいひはてたる句にハ感情秀逸なかるべしとのたまへり    愚案に篇序題曲流ハうたの五句の作りざまなるべし。    篇ハ人 のがり尋るにいまだたゝずミたるさまなるべし    @序ハ申次などを待ほどの事也@題は此事をいひにきたるなどの分なるべし    @曲ハ其意趣をあらハすさま也@流はいとまをこひ出たるなるべしとかや    @たとへば    @篇ハ物の本などの外題也    @序ハ其書の序分也    @題ハ其書に書あらハす所のこまやかなる事をひとつ/\あらハし置たる題目也    @曲ハ其ひとつ/\をつぶさにいへる文句也    @流ハよくいひ終れる心にや。    心敬僧都此五つの作りざまを連歌にも上下両句を一に吟合せて心を得べしと也此用心なくハ。句ごとに冠をあしにはき沓をいたゞく事おほかるべしとぞのたまへりけるさればはいかいも付もてゆく心ばへハことなるべきにあらぬわざなればよく心うべき事也かし  @三十躰 愚案に。十体の中よりさま/\"のきざミ/\ありてすべて三十体成べし 第一 幽玄躰 此体の事おくにしるせり       美人とはかミのかゝりでしるぞかし     絵には小町をうしろむかせよ   長頭丸    行雲体       六月よりもおもふ正月     ぶり/\のなりにむきたる真桑瓜  昌俔    廻雪体       今の世までもしのぶ神農     七賢とうたひしふしにあぢ有て  意安 第二 長高体 愚案定家卿云此躰ハ生得の口むきならでハよまれぬ姿なりとかや俳諧ハ猶しか侍るべし       ちからかいをものぼる鯉哉     馬の瀬にいかなる淵の有やらん  為家卿    高山体 愚案定家卿云@遠白@高山@澄海このさま/\"申出候@長高体の中にかやうの姿相まじハるべし       六つのミちもやふさがりにけん     横笛のあなにひとつの指あけて  長頭丸    遠白体 定家卿云器量天性ならんか稽古年ふりたらんとき常によまるべき也       石のうへにてやすらひにけり     すぐろくの手うちわずらふ指のさき  救済法師    澄海体 定家卿云心をくれなるやうにてたゞありのまゝの事を平懐によミなしたるが さるから物にも混ぜぬかた有てことはりあらハにいひ知てさすがにけだかゝらん哥をや申べき       うらなミのながるゝ物ハひかりもの     くらげといへど字ハ海の月  正式 第三 有心体 定家卿云其心をおもてとしてよそほひをうらにしてよめる也又云#(ノ几)有心躰ヲ以至極とすべし       はかなしや玉をぬすまんはかりごと     仏の目をもくじるすゑの世  長頭丸    物哀体       もゝついてミせん心中のほど     ついひぢの忍びがへしも忍びこえ  正章    不明体       はれさうになき月の黒雲     心をば腎より色に迷ハせて  岡田将監    理世体 定家卿云理世撫民ハ有心躰の本意也異域の堯舜吾朝の延喜天暦の賢き明時聖代のごとくなるべし       あミの糸こそつきやれにけれ     岩かどや鑓のごとくにとがるらん    撫民体       前わたりする人にだきつく     橋板をすべる御主の供をして  法印玄与    至極体 定家卿云正しくまめなる心を含て詞又おぼめかず直につゞけなしてしかも面白き所みえて傍にもぬけ出たらん類と申べく候       我から人にわろくいはるゝ     あまのかるもの知がほは見苦しや  長頭丸 第四 麗体  定家卿云此むねと学べきすがたなるべし       ふるかハ衣ぬぎぞ捨たる     二もとの杉の木陰に水あミて  素阿法師    存直体       わらへばはこそふたつ白けれ     雪の上にあしだやはきて遊ぶらん  道誉法師    花麗体       日本のものゝ口のひろさよ     大唐をこがしにしてやのミぬらん  宗鑑法師     君が代とかの字を付てよむ哥に   長頭丸    松体  定家卿云其心たくミにしてさるからそゞろげなところなくつよきを申侍べし       そも/\これハ何といふべぎ     能のわき名のるよりはや打忘れ  玄旨法    竹体  定家卿云すこしさえたる所そへるがすこしけしきばミてしかも松体のごとくにいつきゝもおなじやうなる類と申べきにや       やせたるうでを出す松陰     ゑんこうがほしさうにする岑の月  長頭丸 第五 #(古又)可然体       くづるゝつちぞながれ出ける     軒ばもる雨のふるやのかべぬれて  素阿法師    秀逸体       いハでかなハぬ時宜もこそあれ     はやくたゞそり捨たしやミだれ髪  由己    抜群体 定家卿有心体にくらべて云長高体を存ずる斗にて毛羽そろへるしるしなき類なるべし       手にとるばかり手ごしをぞミる     ミね高き足がらこゆるあしもとに    写古体 定家卿詞づかひ古めきはてゝ近来の哥とも更に見えぬが心慥にさるから物のあハれうかびそへたるたぐひと申べし       おやにしられぬ子をぞまうくる     わが庭にとなりの竹の根をさし 第六 面白体       仏だにふかき物をやこのむらん     極楽ハよきところなりけり  敬心法師    一興体       いかさまに盗人ならんした心         (ホシイマヽ)     かきそこなへる恣の字    道節    景曲体 定家卿云見様体の哥のしかもおもしろく興ある姿とそこに結構したらん姿にて侍るべきにや       世の中にふしぎの事をミつる哉     わしの尾にこそはなハさきけれ 第七 濃体  定家卿此体をば相構て初心の程よりよミならひて詞づかひあざやかにロがろ成やうに学べし優あるがしかもことハりたしかにきかするさまなるべし       老たるねずミゐるそらぞなき     古ぐらの壁まハり成犬はしり  救済法師 第八 見様体       三輪山の尾さきやながう出ぬらん     栗鼠かミゐる杉むらのうち   正章 第九 有一節躰 定家卿云此体をばいたく好べからす又必捨よとにハあらず時々まぜてよむべしとぞ       かすミのころもすそハぬれけり     さほ姫の春立ながらしとをして  宗鑑 第十 拉鬼体 定家卿云骨を存じて余情を忘れたるたぐひ也       露そつとさハればはつちやけむく/\     すゞめの玉子かへるすおろし  竜慶法師    強力体       山/\の雪のあたまや春の雨     にぎりこぶしをいだすさわらび 愚案に京極黄門御説に云#(ノ几)今の体に幽玄と申ハすべて。哥の心詞かすかにたゞならぬさまなり。行雲廻雪のふたつのすがたと申もたゞ幽玄のうちの余情也。但心有べきにや @幽玄ハ惣構。行雲廻雪は別名なるべし@幽玄と云ハるゝ哥の中に薄雲の月を帯たるよそほひ飛雪の風にたゞよふ気色して詞の外に面影のうかびそへらん哥を行雲廻雪の躰と申べきにとぞ亡父卿申されしとぞのたまひける。 心敬僧都云昔の人の幽玄体と心得たると大やうの輩の思へるとはるかにかハる也古人の幽玄と取をけるハ心を最用せしにやおほやうの人の心えたるハ姿のやさばミたる也心のゑんなるところハ入がたき道也人もすがたをかいつくろへるハ諸人の事也心をおさむるハ一人なるべしされば古人の最上の幽玄体と思へるあとゞも此比ハ分明にや侍らざらんとなん。是哥連歌の幽玄体を沙汰し給へる詞どもなればこれによりて誹諧をもおもひはかるべし。 今此つゐでに猶いはまほしくかゝまほしき事共あまたあれどけふハしハすののちのこゝのかなれば人ごとに急ぎあへる比なるにいとあさましう世につるゝ心のあハたゞしからずしもあらねば猶又つゐでなかるまじやとて筆をさしをく                  ものならし      丙申睦月初五日重校合之           季吟      同五月十四日謹写之          門弟 元隣   延宝元癸丑年仲冬吉日                寺町二条上ル町                           開板